写真とことばで、旅をする。

旅のエッセイ

和歌山県 有田川町

「和歌山の秋、食欲の秋」後編

栗と秋刀魚と、秋の御膳

この手で拾った栗と、秋の味覚を食べ尽くした一日。

映像公開 83 枚の写真

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栗林の小道を歩く後ろ姿
栗林の小道を歩く後ろ姿ARIDAGAWA, WAKAYAMA

この旅のこと

秋の味覚を自分の手で収穫したくて、栗拾いへ。前編と同じ茅葺きの古民家に戻り、谷川の水を引いた台所で栗を水に浸し、その間に庭の炭火で秋刀魚を焼いて縁側で一杯。日が暮れてから鬼皮と渋皮を剥いて栗ご飯を炊き、脂の乗った戻り鰹は極早生みかんのソースで。この手で拾った秋を、食卓に並べた一日。

土地と食のことを、もう少し

01TRAVEL JOURNAL

栗拾いへ

秋の味覚を、この手で収穫してみたくて。向かったのは、栗拾いができる農園だった。入口には鉄骨の小屋があり、「甘くて美味しい くり」と染め抜いたのぼり旗が立っている。

小道の先は、一面の栗林。枝にはまだ青いイガがついていて、穏やかな木漏れ日に照らされた地面に、はじけたイガが転がっている。靴でイガを押さえ、トングで中の実をつまみ出す。とげとげのイガに守られて育った、甘くて美味しい秋の味覚だ。

イガは、やはり痛い。それでも竹のかごはみるみる重くなって、大漁大漁。初めての栗拾いは、秋の山の日差しの下で土の上を歩くだけでも気持ちがよかった。

この場面から映像で見る0:14
イガからのぞく栗の実の寄り
01イガからのぞく栗の実の寄り
「くり」ののぼり旗が立つ栗園の入口の小屋
02「くり」ののぼり旗が立つ栗園の入口の小屋
栗林の小道を歩く後ろ姿
03栗林の小道を歩く後ろ姿
イガをつけた栗の木の枝
04イガをつけた栗の木の枝
枝に残る青いイガの寄り
05枝に残る青いイガの寄り
栗の木の根元に転がるイガ
06栗の木の根元に転がるイガ
木漏れ日の栗林に立つ後ろ姿
07木漏れ日の栗林に立つ後ろ姿
靴の先でイガを押さえる
08靴の先でイガを押さえる
トングでイガから栗を取り出す
09トングでイガから栗を取り出す
栗を入れた竹のかごを提げる手元
10栗を入れた竹のかごを提げる手元
栗林の地面とスカートの裾
11栗林の地面とスカートの裾
かごを提げて逆光の栗林を歩く後ろ姿
12かごを提げて逆光の栗林を歩く後ろ姿
日の当たる地面に落ちたイガ
13日の当たる地面に落ちたイガ

02TRAVEL JOURNAL

谷川の水に浸す

古民家に戻った。開け放した戸の向こうには、大きな葉を広げた野菜の畑と家々、その奥に山。前編と同じ、あの茅葺きの家だ。

この家の台所には、谷川から水を引いた水槽がある。たえず水が注いで、水面に小さな波紋が広がっていた。野菜や食器を洗うのにも使える、昔ながらの仕組みだ。

その水を鍋に汲んで、拾ってきた栗を入れる。虫を追い出したり、皮を柔らかくするために、しばらく水に浸しておく。

この場面から映像で見る1:05
戸口の向こうに広がる畑と家々と山
14戸口の向こうに広がる畑と家々と山
水の注ぐ台所の水槽の水面
15水の注ぐ台所の水槽の水面
水槽の脇で鍋に水を汲む手元
16水槽の脇で鍋に水を汲む手元
かごから鍋へ栗を移す
17かごから鍋へ栗を移す
鍋の水に浸した栗
18鍋の水に浸した栗
水に浸した栗の寄り
19水に浸した栗の寄り

03TRAVEL JOURNAL

炭火で秋刀魚

その間に、さらなる秋の味覚で一杯やろう。庭先の焼き台にバーナーで炭をおこし、網の上に一尾のせる。秋の到来を感じたなら、絶対に食べたいもの。秋が旬の、刀のような形の魚、「秋刀魚」だ。この当て字のセンス、いいなと思う。

炭火の上で、銀色の身がじりじりと色づいていく。脂が落ちて炎が立ち、皮がこんがりと焼けた。黒い皿にのせて、半分に切ったすだちを添える。

この場面から映像で見る1:30
バーナーで炭をおこす庭先の焼き台
20バーナーで炭をおこす庭先の焼き台
網にのせた生のサンマと炭火
21網にのせた生のサンマと炭火
炭火で焼けていくサンマ
22炭火で焼けていくサンマ
網の上で焼けるサンマと立ちのぼる炎
23網の上で焼けるサンマと立ちのぼる炎
こんがり焼けたサンマ
24こんがり焼けたサンマ
黒い皿の焼きサンマと半分に切ったすだち
25黒い皿の焼きサンマと半分に切ったすだち

04TRAVEL JOURNAL

縁側で、すだちを絞って

縁側に腰を下ろし、ノンアルコールのビールをグラスに注ぐ。焼いたサンマにすだちをぎゅっと絞るのが、西日本での流儀だ。

障子を開けた戸口に座って、畑と家並みを眺めながら箸を入れる。旬の味覚で季節の移ろいを感じる幸せ。顔を上げれば、山に囲まれた田んぼと集落があり、木の枝越しに午後の日が差している。

庭でサンマを焼いて、縁側で一杯やる。そんな小さな夢を叶えた。「縁側ビール」も快適な季節になった。

この場面から映像で見る2:00
縁側でノンアルコールビールをグラスに注ぐ手元
26縁側でノンアルコールビールをグラスに注ぐ手元
縁側に腰かけて庭を眺める後ろ姿
27縁側に腰かけて庭を眺める後ろ姿
焼きサンマにすだちを絞る
28焼きサンマにすだちを絞る
すだちをかけた焼きサンマ
29すだちをかけた焼きサンマ
障子の戸口に座る後ろ姿と外の畑
30障子の戸口に座る後ろ姿と外の畑
皿のサンマに箸を入れる手元
31皿のサンマに箸を入れる手元
皿を手にサンマを食べる
32皿を手にサンマを食べる
山に囲まれた田んぼと集落
33山に囲まれた田んぼと集落
木の枝越しに差す午後の日
34木の枝越しに差す午後の日
缶とグラスを脇に縁側に座る
35缶とグラスを脇に縁側に座る
焼きサンマの皿と「龍馬1865」の缶
36焼きサンマの皿と「龍馬1865」の缶
グラスに注いだノンアルコールビールと缶
37グラスに注いだノンアルコールビールと缶

05TRAVEL JOURNAL

夏が過ぎて

日が傾いて、大きな屋根の母屋と隣の蔵が夕空に沈んでいく。畑の向こうの山並みが、ひとつの影になる。

庭の隅にはコスモスが揺れ、枝には柿の実がついていた。夏が過ぎ去り、人は自分の熱情を思い出す。オノ・ヨーコのそんな言葉を思い出した。母屋に灯りがともる。さてさて、栗もそろそろ頃合いだろう。

この場面から映像で見る2:59
大きな屋根の母屋と隣の蔵の夕暮れ
38大きな屋根の母屋と隣の蔵の夕暮れ
夕暮れの畑と山並み
39夕暮れの畑と山並み
庭に咲くコスモス
40庭に咲くコスモス
柿の実をつけた枝越しの夕空
41柿の実をつけた枝越しの夕空
灯りのともった古民家の夕暮れ
42灯りのともった古民家の夕暮れ

06TRAVEL JOURNAL

鬼皮と渋皮

さっと茹でると、皮が剥きやすくなるそうだ。包丁で底に切り込みを入れ、そこから指で剥がしていく。何しろ外側の皮は「鬼皮」と名がつくほど硬い。

鬼皮の下の「渋皮」も柔らかくするため、もう一度お湯に浸す。渋皮を剥いて、黄色い実が顔を出せば、いっちょ上がり。剥いた栗は水に放っておく。

栗の皮を剥くのは、予想どおり容易ではなかった。でも、無心になれる楽しい作業だった。

この場面から映像で見る3:20
包丁で栗の底に切り込みを入れる
43包丁で栗の底に切り込みを入れる
切り込みから鬼皮を剥く手元
44切り込みから鬼皮を剥く手元
鬼皮を剥きかけた栗
45鬼皮を剥きかけた栗
包丁で皮を剥く手元
46包丁で皮を剥く手元
台所でざると鍋を前に栗を剥く
47台所でざると鍋を前に栗を剥く
湯に浸した栗
48湯に浸した栗
渋皮を剥く手元
49渋皮を剥く手元
皮を剥き終えた黄色い栗
50皮を剥き終えた黄色い栗
剥いた栗を水に入れる手元
51剥いた栗を水に入れる手元
水に浸した剥き栗
52水に浸した剥き栗

07TRAVEL JOURNAL

きのこと、戻り鰹と、極早生みかん

玉ねぎを薄切りにする。アルミホイルの上にしいたけ、しめじ、えのき、舞茸を広げてバターをのせ、包んでおく。きのこも、秋の食卓に欠かせない。

主役はもうひとつ。トロカツオとも呼ばれる、脂の乗った秋の戻り鰹だ。フライパンで皮目から焼き、極早生みかんと一緒に洋風に仕立ててみる。鰹を焼いた残りのオイルにバルサミコ酢を加え、生搾りのみかん果汁をたっぷり注ぐと、甘酸っぱく爽やかなソースができた。

焼いた鰹を切り分け、大葉と玉ねぎのスライス、みかんの果肉と一緒に盛って、ソースをかける。和歌山の鰹と、みかんの和カルパッチョ。

この場面から映像で見る3:53
まな板の上で玉ねぎを切る
53まな板の上で玉ねぎを切る
玉ねぎを薄切りにする手元
54玉ねぎを薄切りにする手元
アルミホイルにのせたきのことバター
55アルミホイルにのせたきのことバター
しいたけ、しめじ、えのき、舞茸とバター
56しいたけ、しめじ、えのき、舞茸とバター
ホイルを折り畳む手元
57ホイルを折り畳む手元
きのこをホイルで包む
58きのこをホイルで包む
ホイルの端を折り込む
59ホイルの端を折り込む
フライパンで焼く鰹の節
60フライパンで焼く鰹の節
トングで押さえて皮目を焼く
61トングで押さえて皮目を焼く
半分に切った極早生みかん
62半分に切った極早生みかん
フライパンにバルサミコ酢を加える
63フライパンにバルサミコ酢を加える
ソースを煮詰めるフライパン
64ソースを煮詰めるフライパン
できあがった甘酸っぱいソース
65できあがった甘酸っぱいソース
焼いた鰹を切る手元
66焼いた鰹を切る手元
大葉と玉ねぎを添えたカルパッチョにソースをかける
67大葉と玉ねぎを添えたカルパッチョにソースをかける

08TRAVEL JOURNAL

秋の御膳

栗ご飯も、美味しそうに炊けた。釜のふたを開けると、黄金色の栗がごろごろと顔を出す。きのこのホイル包みは、庭の炭火の網にのせて焼いてみた。開けば、バターの香りと湯気が立つ。

食卓に並んだのは、黒ごまをふった栗ご飯、きのこのホイル焼き、鰹とみかんのカルパッチョ。グラスにノンアルコールのビールを注いで、秋の味覚満喫ディナーのはじまり。濃厚な戻り鰹と、みずみずしい極早生みかんを一緒に口へ。和歌山最強タッグか。

この手で収穫した食材で作った、季節の味。自ら季節のページをめくったような感覚が、なんとも嬉しい。嗚呼、食欲の秋。夜の縁側に、灯りがともっていた。

この場面から映像で見る4:54
炊き上がった栗ご飯の釜
68炊き上がった栗ご飯の釜
しゃもじで栗ご飯を混ぜる
69しゃもじで栗ご飯を混ぜる
混ぜ合わせた栗ご飯
70混ぜ合わせた栗ご飯
炭火の網にのせたホイル包み
71炭火の網にのせたホイル包み
ホイル包みを開く手元
72ホイル包みを開く手元
開きかけのホイル包み
73開きかけのホイル包み
ホイルの中の焼けたきのこ
74ホイルの中の焼けたきのこ
食卓で缶を手に取る
75食卓で缶を手に取る
料理の並ぶ食卓でグラスに注ぐ
76料理の並ぶ食卓でグラスに注ぐ
栗ご飯の茶碗とグラスと缶
77栗ご飯の茶碗とグラスと缶
みかんのソースをかけた鰹のカルパッチョ
78みかんのソースをかけた鰹のカルパッチョ
暗い部屋で食卓に向かう後ろ姿
79暗い部屋で食卓に向かう後ろ姿
黒ごまをふった栗ご飯の茶碗
80黒ごまをふった栗ご飯の茶碗
栗ご飯の茶碗を手に、箸を持つ
81栗ご飯の茶碗を手に、箸を持つ
障子の部屋の食卓に座る後ろ姿
82障子の部屋の食卓に座る後ろ姿
夜の古民家の縁側と灯り
83夜の古民家の縁側と灯り

THE JOURNEY IN FILM

風の音も、台所の音も。

写真の向こうに流れていた時間を、映像でも。

映像で見る7分

THE BORROWER’S NOTES

借り暮らしの和歌山・有田川メモ。

立ち寄った店、台所で作ったもの、この土地のこと。旅のつづきに、覚えておきたいことを。

01立ち寄った店

  • 栗拾いの農園

    栗拾いの農園

    入口に鉄骨の小屋と「くり」ののぼり旗が立つ、丘の上の栗林。木漏れ日の地面に落ちたイガからトングで実を取り出し、竹のかごに集める。秋の山の日差しの下、土の上を歩くだけでも気持ちがいい。

02作った料理

  • 栗ご飯

    栗ご飯

    自分で拾った栗で炊いた、初めての栗ご飯。栗の外側の硬い皮は「鬼皮」、その内側の薄い皮は「渋皮」と呼ばれ、さっと茹でたり湯に浸したりして柔らかくしてから剥く。剥くのは容易ではないが、無心になれる作業だった。

    材料栗(拾ってきたもの)・米・黒ごま

    1. 栗をしばらく水に浸し、虫を追い出して皮を柔らかくする
    2. さっと茹でて、底に包丁で切り込みを入れ、鬼皮を剥く
    3. もう一度お湯に浸して渋皮を剥き、水に放つ
    4. 米と一緒に炊き、茶碗によそって黒ごまをふる
  • 炭火焼きの秋刀魚、すだち添え

    炭火焼きの秋刀魚、すだち添え

    サンマは「秋刀魚」と書くが、この表記は大正時代以降のもので、古くは「青串魚」と書いた例もある。もともとサンマは中部地方以北の呼び名で、京都や和歌山ではサヨリ、関西から四国・九州ではサイラやサイリと呼ばれていたという。焼いたサンマにすだちを絞るのは西日本の流儀。すだちは徳島県が全国の生産量の98%を占め、サンマなどの焼き魚に添えて使われる。

    材料サンマ・すだち

    1. 庭先の焼き台にバーナーで炭をおこす
    2. 網にのせて、皮がこんがりするまで焼く
    3. 皿にのせ、半分に切ったすだちを絞る

    出典: imidas.jp maff.go.jp

  • 和歌山の鰹と、みかんの和カルパッチョ

    和歌山の鰹と、みかんの和カルパッチョ

    春の初鰹に対して、9月ごろから南下してくる鰹は戻り鰹と呼ばれる。餌場から戻ってくるため脂が乗っていて、身がピンク色になることからトロ鰹とも言われる。和歌山では紀南の沿岸で、明治時代にハワイから取り入れたと伝わる「ケンケン釣り」のカツオ漁が行われ、すさみに水揚げされるものは「すさみケンケン鰹」の名で知られる(こちらの旬は3〜5月)。今回はその和歌山の鰹を、同じ県の極早生みかんのソースで食べた。

    材料戻り鰹(節)・極早生みかん・玉ねぎ・大葉・バルサミコ酢・油

    1. 鰹をフライパンで皮目から焼く
    2. 残った油にバルサミコ酢を加え、生搾りのみかん果汁をたっぷり入れてソースにする
    3. 鰹を切り分け、大葉・薄切りの玉ねぎ・みかんの果肉と盛り、ソースをかける

    出典: pref.wakayama.lg.jp agri.mynavi.jp

  • きのこのバターホイル焼き

    きのこのバターホイル焼き

    きのこも秋の食卓に欠かせない。四種類のきのこをバターと一緒にホイルで包み、サンマを焼いたのと同じ庭の炭火で焼いた。開けばバターの香りと湯気が立つ。

    材料しいたけ・しめじ・えのき・舞茸・バター

    1. アルミホイルにきのこを広げ、バターをのせて包む
    2. 庭の炭火の網にのせて焼く

03土地のこと

  • ノンアルコールビール「龍馬1865」

    ノンアルコールビール「龍馬1865」

    縁側と食卓で飲んだのは、日本ビール株式会社のノンアルコールビール「龍馬1865」。アルコール分0.00%で、麦芽100%・2種のホップを使い、添加物不使用。缶には「大麦麦芽100% ノンアルコール」「プリン体ゼロ」と書かれている。

    出典: nipponbeer.jp

  • 谷川の水が引かれた古民家宿

    谷川の水が引かれた古民家宿

    前編と同じ家。台所には谷川から水を引いた水槽があって、たえず水が注ぎ、野菜や食器を洗うのにも使える。庭先には炭火の焼き台があり、縁側で食べられる。夕方には母屋と蔵の大きな屋根が、畑と山並みの中に沈んでいく。

    出典: youtube.com

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01栗拾いへ

02谷川の水に浸す

03炭火で秋刀魚

04縁側で、すだちを絞って

05夏が過ぎて

06鬼皮と渋皮

07きのこと、戻り鰹と、極早生みかん

08秋の御膳