
この旅のこと
秋の味覚を自分の手で収穫したくて、栗拾いへ。前編と同じ茅葺きの古民家に戻り、谷川の水を引いた台所で栗を水に浸し、その間に庭の炭火で秋刀魚を焼いて縁側で一杯。日が暮れてから鬼皮と渋皮を剥いて栗ご飯を炊き、脂の乗った戻り鰹は極早生みかんのソースで。この手で拾った秋を、食卓に並べた一日。
土地と食のことを、もう少し01TRAVEL JOURNAL
栗拾いへ
秋の味覚を、この手で収穫してみたくて。向かったのは、栗拾いができる農園だった。入口には鉄骨の小屋があり、「甘くて美味しい くり」と染め抜いたのぼり旗が立っている。
小道の先は、一面の栗林。枝にはまだ青いイガがついていて、穏やかな木漏れ日に照らされた地面に、はじけたイガが転がっている。靴でイガを押さえ、トングで中の実をつまみ出す。とげとげのイガに守られて育った、甘くて美味しい秋の味覚だ。
イガは、やはり痛い。それでも竹のかごはみるみる重くなって、大漁大漁。初めての栗拾いは、秋の山の日差しの下で土の上を歩くだけでも気持ちがよかった。
この場面から映像で見る0:1402TRAVEL JOURNAL
谷川の水に浸す
古民家に戻った。開け放した戸の向こうには、大きな葉を広げた野菜の畑と家々、その奥に山。前編と同じ、あの茅葺きの家だ。
この家の台所には、谷川から水を引いた水槽がある。たえず水が注いで、水面に小さな波紋が広がっていた。野菜や食器を洗うのにも使える、昔ながらの仕組みだ。
その水を鍋に汲んで、拾ってきた栗を入れる。虫を追い出したり、皮を柔らかくするために、しばらく水に浸しておく。
この場面から映像で見る1:0503TRAVEL JOURNAL
炭火で秋刀魚
その間に、さらなる秋の味覚で一杯やろう。庭先の焼き台にバーナーで炭をおこし、網の上に一尾のせる。秋の到来を感じたなら、絶対に食べたいもの。秋が旬の、刀のような形の魚、「秋刀魚」だ。この当て字のセンス、いいなと思う。
炭火の上で、銀色の身がじりじりと色づいていく。脂が落ちて炎が立ち、皮がこんがりと焼けた。黒い皿にのせて、半分に切ったすだちを添える。
この場面から映像で見る1:3004TRAVEL JOURNAL
縁側で、すだちを絞って
縁側に腰を下ろし、ノンアルコールのビールをグラスに注ぐ。焼いたサンマにすだちをぎゅっと絞るのが、西日本での流儀だ。
障子を開けた戸口に座って、畑と家並みを眺めながら箸を入れる。旬の味覚で季節の移ろいを感じる幸せ。顔を上げれば、山に囲まれた田んぼと集落があり、木の枝越しに午後の日が差している。
庭でサンマを焼いて、縁側で一杯やる。そんな小さな夢を叶えた。「縁側ビール」も快適な季節になった。
この場面から映像で見る2:0005TRAVEL JOURNAL
夏が過ぎて
日が傾いて、大きな屋根の母屋と隣の蔵が夕空に沈んでいく。畑の向こうの山並みが、ひとつの影になる。
庭の隅にはコスモスが揺れ、枝には柿の実がついていた。夏が過ぎ去り、人は自分の熱情を思い出す。オノ・ヨーコのそんな言葉を思い出した。母屋に灯りがともる。さてさて、栗もそろそろ頃合いだろう。
この場面から映像で見る2:5906TRAVEL JOURNAL
鬼皮と渋皮
さっと茹でると、皮が剥きやすくなるそうだ。包丁で底に切り込みを入れ、そこから指で剥がしていく。何しろ外側の皮は「鬼皮」と名がつくほど硬い。
鬼皮の下の「渋皮」も柔らかくするため、もう一度お湯に浸す。渋皮を剥いて、黄色い実が顔を出せば、いっちょ上がり。剥いた栗は水に放っておく。
栗の皮を剥くのは、予想どおり容易ではなかった。でも、無心になれる楽しい作業だった。
この場面から映像で見る3:2007TRAVEL JOURNAL
きのこと、戻り鰹と、極早生みかん
玉ねぎを薄切りにする。アルミホイルの上にしいたけ、しめじ、えのき、舞茸を広げてバターをのせ、包んでおく。きのこも、秋の食卓に欠かせない。
主役はもうひとつ。トロカツオとも呼ばれる、脂の乗った秋の戻り鰹だ。フライパンで皮目から焼き、極早生みかんと一緒に洋風に仕立ててみる。鰹を焼いた残りのオイルにバルサミコ酢を加え、生搾りのみかん果汁をたっぷり注ぐと、甘酸っぱく爽やかなソースができた。
焼いた鰹を切り分け、大葉と玉ねぎのスライス、みかんの果肉と一緒に盛って、ソースをかける。和歌山の鰹と、みかんの和カルパッチョ。
この場面から映像で見る3:5308TRAVEL JOURNAL
秋の御膳
栗ご飯も、美味しそうに炊けた。釜のふたを開けると、黄金色の栗がごろごろと顔を出す。きのこのホイル包みは、庭の炭火の網にのせて焼いてみた。開けば、バターの香りと湯気が立つ。
食卓に並んだのは、黒ごまをふった栗ご飯、きのこのホイル焼き、鰹とみかんのカルパッチョ。グラスにノンアルコールのビールを注いで、秋の味覚満喫ディナーのはじまり。濃厚な戻り鰹と、みずみずしい極早生みかんを一緒に口へ。和歌山最強タッグか。
この手で収穫した食材で作った、季節の味。自ら季節のページをめくったような感覚が、なんとも嬉しい。嗚呼、食欲の秋。夜の縁側に、灯りがともっていた。
この場面から映像で見る4:54THE BORROWER’S NOTES
借り暮らしの和歌山・有田川メモ。
立ち寄った店、台所で作ったもの、この土地のこと。旅のつづきに、覚えておきたいことを。
01立ち寄った店

栗拾いの農園
入口に鉄骨の小屋と「くり」ののぼり旗が立つ、丘の上の栗林。木漏れ日の地面に落ちたイガからトングで実を取り出し、竹のかごに集める。秋の山の日差しの下、土の上を歩くだけでも気持ちがいい。
02作った料理

栗ご飯
自分で拾った栗で炊いた、初めての栗ご飯。栗の外側の硬い皮は「鬼皮」、その内側の薄い皮は「渋皮」と呼ばれ、さっと茹でたり湯に浸したりして柔らかくしてから剥く。剥くのは容易ではないが、無心になれる作業だった。
材料栗(拾ってきたもの)・米・黒ごま
- 栗をしばらく水に浸し、虫を追い出して皮を柔らかくする
- さっと茹でて、底に包丁で切り込みを入れ、鬼皮を剥く
- もう一度お湯に浸して渋皮を剥き、水に放つ
- 米と一緒に炊き、茶碗によそって黒ごまをふる

炭火焼きの秋刀魚、すだち添え
サンマは「秋刀魚」と書くが、この表記は大正時代以降のもので、古くは「青串魚」と書いた例もある。もともとサンマは中部地方以北の呼び名で、京都や和歌山ではサヨリ、関西から四国・九州ではサイラやサイリと呼ばれていたという。焼いたサンマにすだちを絞るのは西日本の流儀。すだちは徳島県が全国の生産量の98%を占め、サンマなどの焼き魚に添えて使われる。
材料サンマ・すだち
- 庭先の焼き台にバーナーで炭をおこす
- 網にのせて、皮がこんがりするまで焼く
- 皿にのせ、半分に切ったすだちを絞る
出典: imidas.jp maff.go.jp

和歌山の鰹と、みかんの和カルパッチョ
春の初鰹に対して、9月ごろから南下してくる鰹は戻り鰹と呼ばれる。餌場から戻ってくるため脂が乗っていて、身がピンク色になることからトロ鰹とも言われる。和歌山では紀南の沿岸で、明治時代にハワイから取り入れたと伝わる「ケンケン釣り」のカツオ漁が行われ、すさみに水揚げされるものは「すさみケンケン鰹」の名で知られる(こちらの旬は3〜5月)。今回はその和歌山の鰹を、同じ県の極早生みかんのソースで食べた。
材料戻り鰹(節)・極早生みかん・玉ねぎ・大葉・バルサミコ酢・油
- 鰹をフライパンで皮目から焼く
- 残った油にバルサミコ酢を加え、生搾りのみかん果汁をたっぷり入れてソースにする
- 鰹を切り分け、大葉・薄切りの玉ねぎ・みかんの果肉と盛り、ソースをかける

きのこのバターホイル焼き
きのこも秋の食卓に欠かせない。四種類のきのこをバターと一緒にホイルで包み、サンマを焼いたのと同じ庭の炭火で焼いた。開けばバターの香りと湯気が立つ。
材料しいたけ・しめじ・えのき・舞茸・バター
- アルミホイルにきのこを広げ、バターをのせて包む
- 庭の炭火の網にのせて焼く
03土地のこと

ノンアルコールビール「龍馬1865」
縁側と食卓で飲んだのは、日本ビール株式会社のノンアルコールビール「龍馬1865」。アルコール分0.00%で、麦芽100%・2種のホップを使い、添加物不使用。缶には「大麦麦芽100% ノンアルコール」「プリン体ゼロ」と書かれている。
出典: nipponbeer.jp

谷川の水が引かれた古民家宿
前編と同じ家。台所には谷川から水を引いた水槽があって、たえず水が注ぎ、野菜や食器を洗うのにも使える。庭先には炭火の焼き台があり、縁側で食べられる。夕方には母屋と蔵の大きな屋根が、畑と山並みの中に沈んでいく。
出典: youtube.com
PHOTO ALBUM写真を見渡す83全写真をひらく一覧を閉じる
写真を選ぶと、大きな画面で一枚ずつ眺められます。











































































