
この旅のこと
最高気温が氷点下という北海道の冬の日を、雪山のログハウスで過ごした。町のスーパーで海鮮丼の朝ごはん、凍った湖でワカサギ釣りに挑み、しばれた体を味噌らーめんとザンギで温める。夜は暖炉に火をくべて、映画「耳をすませば」の鍋焼きうどんと、チカの唐揚げ。とても寒くて、暖かい一日。
土地と食のことを、もう少し01TRAVEL JOURNAL
氷点下の朝、暖炉のそばで
最高気温が氷点下という、北海道の冬の日。しずかな雪山のログハウスで朝を迎えた。暖炉のガラス戸の向こうでは、薪が静かに燃えている。
居間には暖炉とソファ、丸太を組んだテーブル。暖炉のそばの椅子に腰かけて、朝のコーヒーを飲む。いつもより美味しく感じるのは、きっと外の寒さのせいだ。夜は氷点下14度まで冷え込んだというのに、家の中は暖かい。北海道の住まいは、寒さに耐えるようにできている。
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雪が止んで
雪が止んで、晴れてきた。窓辺に立つと、白い林が光っている。ログハウスは雪の林の中に建っていて、玄関前の雪は腰のあたりまで積もっていた。
町まで出かけて、朝食にしよう。林の中の雪道を、一歩ずつ歩いていく。
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スーパーのイートインで、海鮮丼
朝食は、町のスーパーのイートインで海鮮丼。入口には「海鮮」「そば」ののぼりが並び、お食事処の看板も出ている。
黒い丼に、うに、いくら、ほたて、サーモン、甘海老。一つひとつのネタが新鮮で、なまら旨い。「なまら」は、北海道の言葉で「とても」。窓辺の席で、汁物と一緒にゆっくり味わった。近所のスーパーでこれほどの海鮮丼が食べられるのは、さすが北海道だ。
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凍った湖で、ワカサギ釣り
夕食にも、ぜひ地のものをいただきたい。向かったのは、一面に凍った湖。氷の穴に短い竿を垂らす、初めてのワカサギ釣りだ。赤い浮きが、穴の中で揺れている。
折りたたみの椅子に腰かけて、竿先をじっと見つめる。天ぷらを揚げる用意はしてある。食べきれないほど釣れたらどうしよう。青空の下、雪原の向こうに低い山並みが続く。手袋のままノンアルコールビールを開けて、雪の上に置いた。
湖の底ぎりぎりで揺らしたり、止めたり。体が冷え切るのも忘れて粘ったけれど、ワカサギは一尾も釣れなかった。
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泣きっ面に蜂
泣きっ面に蜂、釣果ボウズに雪。魚売り場のパックに並んでいたのは、ワカサギにそっくりな「チカ」。港には漁船が並び、マストで大漁旗がはためいていた。夕食の魚は、こうして手に入れた。
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しばれた体に、味噌らーめん
雪の降る中、のれんのかかった食堂へ。しばれた心と身体に、味噌らーめんが染み渡る。「しばれる」は、凍るほど寒いという意味の北海道の言葉だ。
黄色い縮れ麺に、なるととチャーシュー、ねぎ。カウンターの向こうの厨房では、湯気が立っている。北海道名物「ザンギ」もはずせない。タレに漬け込んで揚げた鶏の唐揚げが、皿に山盛りで出てきた。
赤い丸椅子のカウンター、壁には額と色紙、窓辺のテーブルに品書き。家庭的な食堂で、心底温まった。
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クマと鮭の屋根
国道沿いに、屋根の上にクマと鮭の像をのせた赤い建物。海鮮料理のレストランで、水槽にはカニが並んでいた。雪の積もった町の通りを歩き、雪原の向こうの木立と町を眺めながら、次の店へ向かう。
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北海道と言ったら、乳製品
北海道と言ったら、乳製品もはずせない。廃校になった学校の校舎を使った酪農館で、瓶入りの「とろ〜りプリン」と登別チーズを手に入れた。入口には「やさしく たくましい 札内っ子」と書かれた、学校のころの垂れ幕がまだ掛かっている。
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ただいま
林の中の雪道を歩いて、ログハウスへ帰る。まっすぐな木立の間に、午後の光が差していた。玄関の脇には薪が積まれ、その前の雪には小さな雪の山がふたつ。ただいま。
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暖炉に火をくべる
火ばさみで薪をくべる。毎日となると大変なのだろうけど、暖炉に火をくべるのって、ワクワクする。ガラス戸の奥で炎が立ち上がり、レンガの暖炉が部屋をあたためていく。
暖炉のそばで、のぼりべつ とろ〜りプリン。瓶にスプーンを入れると、名前のとおりとろりとすくえる。北海道の大地を感じる美味しさだ。炎をぼんやり眺めて、もう一本薪を足す。
日が暮れて、雪の中のログハウスに灯りがともった。屋根には雪が厚く積もり、煙突が立っている。
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星のにんじんと、チカの唐揚げ
夕食の支度。にんじんを星の形に抜き、渦巻きのかまぼこを切る。ワカサギは釣れなくて残念だったので、したっけ代打、そっくりなチカの出番だ。「したっけ」は「それなら」という北海道の言葉。
手のひらほどのチカに粉をまぶし、油で揚げる。紙の上に取り出すと、衣はきつね色。土鍋にうどんと具を入れ、卵を落として、かまぼこと星のにんじん、青菜をのせる。ふたをして、ミトンで食卓へ。
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暖炉のある部屋で、鍋焼きうどん
窓の外では、夜の雪の上に小さな雪だるま。雪がサラサラすぎて転がせなかったので、雪の塊を削って丸くした。木の枝で顔をつけたら、好きな俳優に似た気がして、「としゆき」と名付けた。
暖炉のある部屋で、食べてみたかったもの。それは映画「耳をすませば」の鍋焼きうどん。土鍋のふたを開けると、湯気の向こうに半熟の卵と星のにんじん。うどんは、北海道産の小麦のものを選んだ。
チカの唐揚げは、骨ごと食べられて、ほくほくで凄く美味しい。ノンアルコールビールをグラスに注いで、ひとり乾杯。おじいさんが作ってくれた鍋焼きうどんがあんなに美味しそうに見えるのは、暖炉という場所はもちろんだけど、きっと雫が頑張ったからなんだろうな。
この場面から映像で見る5:5013TRAVEL JOURNAL
静寂な夜
現実世界と隔離されたような、静寂な夜。居間の奥のテーブルに座り、暖炉の小さな火を眺める。外に出ると、灯りのともったログハウスと雪だるまが、雪の中に並んでいた。ゆっくりと物語の世界に浸ってみるのも、良いじゃないか。
この場面から映像で見る6:54THE BORROWER’S NOTES
借り暮らしの北海道メモ。
立ち寄った店、台所で作ったもの、この土地のこと。旅のつづきに、覚えておきたいことを。
01立ち寄った店

町のスーパーのイートイン
入口に「海鮮」「そば」ののぼりと「お食事処」の看板が出たスーパー。イートインで、うに・いくら・ほたて・サーモン・甘海老の海鮮丼を朝ごはんにした。

ソーダ食堂
北海道登別市千歳町6丁目1-98
登別の町なかの大衆食堂。味噌らーめんと、山盛りのザンギを食べた。赤い丸椅子のカウンターと、額や色紙の掛かった壁が家庭的。営業時間や定休日は変わるので、行く前に確かめてほしい。
出典: tabelog.com

かに御殿
北海道白老郡白老町竹浦96-2
国道36号沿いの、屋根にクマと鮭の像をのせた赤い建物。海鮮料理のレストランと海産物の売店があり、水槽のカニをのぞいた。掲載ページには、その後に閉店したと表示されている。

のぼりべつ酪農館
北海道登別市札内町73-3
登別産の生乳で乳製品をつくっていた直売所。廃校になった学校の校舎を工場と売店にしていて、入口には学校のころの垂れ幕が残っていた。瓶入りの「とろ〜りプリン」と登別チーズを買った。2026年5月に事業を停止したと報じられている。
02作った料理

鍋焼きうどん
1995年のスタジオジブリの映画「耳をすませば」(監督・近藤喜文)で、雑貨店「地球屋」の主人が、主人公の雫に暖炉の前で振る舞う鍋焼きうどんを真似た。星の形に抜いたにんじんは、その場面の再現記事でも定番になっている。うどんは北海道産の小麦のものを使った。
材料うどん(北海道産小麦)・卵・かまぼこ・にんじん・青菜
- にんじんを薄く切り、抜き型で星の形にする
- かまぼこを切る
- 土鍋にうどんと具を入れ、卵を落として、かまぼこ・にんじん・青菜をのせる
- ふたをして火にかけ、そのまま食卓へ

チカの唐揚げ
チカはキュウリウオ科ワカサギ属の海の魚で、北海道沿岸に多い。ワカサギとよく似ているが、鱗が細かく、最大で18センチほどになる。天ぷらやフライで食べるのが一般的。氷上のワカサギ釣りがボウズだったので、魚屋で買ったチカを代わりに揚げた。骨ごと食べられて、ほくほくだった。
材料チカ・小麦粉・揚げ油
- チカを丸ごとボウルに入れ、粉をまぶす
- 油でからりと揚げる
- 紙の上に取り出して油を切る
出典: honda.co.jp
03土地のこと

ザンギ
北海道全域で食べられている鶏の唐揚げ。昭和30年ごろ、釧路の鶏料理店が鶏一羽をぶつ切りにして揚げたのが始まりとされ、中国料理の「炸鶏(ザーギー)」に運が付くよう「ン」を入れた名前だという説がある。揚げる前に醤油ベースの甘辛いタレに漬け込むので、ふつうの唐揚げより味が濃い。
出典: maff.go.jp

ワカサギと氷上釣り
ワカサギは全長10センチほどのキュウリウオ科の魚で、北海道では地方名を「チカ」ともいう。石狩川や網走湖、阿寒湖、洞爺湖などにすみ、冬の風物詩として氷上のワカサギ釣りが知られている。網走湖では氷に穴を開けて氷の下で網を引く漁も行われる。味は淡白で、天ぷらやかき揚げにする。

北海道の言葉
この回の字幕に出てくる北海道の言葉。「なまら」は「とても」、「しばれる」は凍るほど冷え込むこと、「したっけ」は「それでは」「そうしたら」で、別れのあいさつにも使う。
出典: livejapan.com

雪山のログハウス
今回お借りしたのは、雪の林の中に建つログハウス。レンガの暖炉と薪、丸太を組んだテーブル、大きな窓のある台所がある。夜は氷点下14度まで冷えたが、家の中は暖かかった。
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