
この旅のこと
江ノ電の走る海辺の町、鎌倉で朝を迎えた。農協の直売所で鎌倉野菜を、市場の干物屋で魚の干物を買って、古い木の家の台所でけんちん汁を作る。午後は江の島へ渡り、1902年創業の和菓子屋でできたての女夫饅頭を、崖の上の食堂で名物の江ノ島丼を。海の向こうには、富士山が見えた。
土地と食のことを、もう少し01TRAVEL JOURNAL
江ノ電の走る海辺の町で
江ノ電が走る町、鎌倉の朝。踏切の前で、緑とクリーム色の電車が目の前を通り過ぎていくのを待った。電柱の向こうには海が広がり、遠くに江の島の影が見える。
線路を渡ると、海沿いの道に出た。黄色と黒の踏切の柱の脇を抜けると、波打ち際ではサーファーたちが朝の波に乗っている。駅名標には「鎌倉高校前」とあった。海のすぐそばにある、江ノ電の小さな駅だ。
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朝の市場で、鎌倉野菜を
地元の鎌倉野菜を使った朝食を作りたくて、近くの農作物直売所を訪れてみることにした。「鎌倉市農協連即売所」の看板の下をくぐると、青いシートを張った台に、葉付きのラディッシュや赤大根、緑と黄色のズッキーニが並んでいる。値札は手書きで、「1束」いくらと素っ気ない。
市場の奥には、調味料や乾物を扱う店もある。朝の市場って、良いな。通路を抜けた先に、朝の通りの明るさが見えた。
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海辺の街の朝食には、干物を
海辺の街の朝食には、魚の干物も外せない。市場の並びにある干物の店で、ガラスのケースをのぞいた。さつま揚げの隣に、あじやかます、縞ほっけの開きが竹の皿にのって並んでいる。手書きの札を見ながら、袋に入った干物を選んだ。
市場の建物には、赤いひさしの中華そばの店も入っている。市場併設の食堂って、美味しいことが多いから気になる。こちらは、また次の機会に。
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ただいま
海を背にして横断歩道を渡り、坂道を上る。緑に埋もれるような古い木の家が、今回の借り暮らしの家だ。
ただいま。庭には白いテーブルと椅子が置かれ、木漏れ日が落ちている。
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鎌倉の郷土料理、けんちん汁を作る
鎌倉の郷土料理「けんちん汁」を作ろう。新聞紙の上に、市場で買ってきた赤大根と葉付きの人参、長ねぎ、それに豆腐を広げる。格子戸の古い戸棚を開けて、椀と器を取り出した。
けんちん汁は、鎌倉の建長寺で作られた「建長汁」という精進料理が発祥と言われている。赤大根の皮をピーラーでむくと、中は白い。ごぼうは薄く切って水にさらし、人参も切りそろえる。
網には干物をのせて、焼きはじめた。フライパンに油をひいて、ごぼう、人参、大根を炒める。台所の窓の外は、一面の緑だ。香ばしい煙を上げる干物に、やっぱり、ワクワクする。
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鎌倉朝定食の出来上がり
ご当地の味を地元の食材で作り、その地でいただく。煮上がったけんちん汁を漆の椀によそうと、くずした豆腐としいたけ、人参、大根、ねぎが顔を出した。
炊きたてのご飯に、けんちん汁、焼きたての干物。鎌倉朝定食の出来上がり。椀を両手で包んで、ひと口。
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建長汁の昔話
昔むかし、寺の修行僧が豆腐を床に落としてしまった。その救済策として、禅師が作ったのが「建長汁」らしい。縁側に腰かけ、庭の緑を眺めながら、くずれた豆腐の入った汁をすする。
鎌倉昔話に、知恵と優しさを感じました。本棚には鎌倉や日本のガイドブックが並び、すだれ越しの光が畳に落ちている。木の葉の向こうに、古い家の窓が光っていた。
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江の島へ
鎌倉に居るなら「江の島」にも訪れたい。踏切ではサーフボードを抱えた人が信号を待ち、海沿いの道をスクーターが走り抜けていく。砂浜の向こうに、江の島がこんもりと浮かんでいた。
橋を渡って島へ。細い路地を抜けると、参道の入口に青銅の鳥居が立っている。石段を上った先には朱の鳥居と、竜宮城のような楼門が見えた。
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できたての女夫饅頭
のぼりの立つ参道の石段を上っていくと、1902年創業という老舗の和菓子屋さんがあった。店先の棚には海苔羊羹や弁天塩羊羹の箱が並び、奥では古い機械が饅頭を蒸している。
できたての「女夫(めおと)饅頭」。茶色と白の饅頭がひとつずつ、黒い盆にのって出てきた。割ると、茶色いほうからは粒あんがのぞく。漫画『孤独のグルメ』で井之頭五郎が食べていたお饅頭がこれである。
店の前のベンチに腰かけて、ほおばる。江の島の歴史と文化を感じる味わい。
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島の奥へ
饅頭を食べ終えて、さらに島の奥へ。石碑の脇を抜け、「氷」の旗が揺れる店の前を通り、木立の中の石段を上る。
海に面した食堂が見えてきた。「魚見亭」の看板と「江の島丼」ののぼりの先、木々の間から見下ろすと、ヨットハーバーと湘南の海が広がっていた。
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江ノ島丼と富士山
崖の上のデッキに立つと、海と対岸の町が一望できる。海を見渡せる「離れ小島感」が楽しい。店の壁には、昭和57年に映画『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』の撮影がここで行われ、お座敷は当時のままだと書かれた張り紙があった。寅さんはあの時、ここで何を思ったのだろう。
窓辺の席からは、海の向こうに富士山が見えた。名物の「江ノ島丼」は、さざえを卵でとじた丼。三つ葉と半熟の卵をのせて、れんげですくう。
青空と海辺の街、そして富士山を眺める。心地よい潮風と自然が描いた絵画は「最高の調味料」。鎌倉の借り暮らし、絶賛堪能中です。
この場面から映像で見る5:06THE BORROWER’S NOTES
借り暮らしの鎌倉メモ。
立ち寄った店、台所で作ったもの、この土地のこと。旅のつづきに、覚えておきたいことを。
01立ち寄った店

鎌倉市農協連即売所(レンバイ)
神奈川県鎌倉市小町1-13-10
1928年に始まった、鎌倉市内と近郊の生産者による直売所。日本で最初のマルシェともいわれる。生産者がグループごとに交代で店を出し、季節の野菜を並べる。今朝はここで、赤大根や葉付きの人参を買った。
出典: mapple.net

ヨリドコロ(市場の干物の店)
鎌倉市農協連即売所の隣、鎌倉中央食品市場の建物に入る干物の店。ガラスのケースに、あじやかます、縞ほっけ、塩さばの開きとさつま揚げが並ぶ。同じ店が稲村ヶ崎と由比ガ浜大通りに、干物定食を出すカフェを開いている。
出典: value-press.com


江之島亭
神奈川県藤沢市江の島2-6-5
江の島の奥、崖の上に建つ明治42年(1909年)創業の食事処。窓辺の席とテラスから湘南の海が一望でき、晴れた日には富士山も見える。名物の江ノ島丼は、さざえを卵でとじた丼。窓側の席は、1982年公開の映画『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』(シリーズ第29作、マドンナはいしだあゆみ)の撮影に使われた。
出典: mapple.net tv-tokyo.co.jp tv-tokyo.co.jp ja.wikipedia.org
02作った料理

けんちん汁
根菜と豆腐を油で炒めてから煮込む汁物。発祥には諸説あり、中国の精進料理「巻繊(けんちゃん)」が日本語になったという説と、鎌倉の建長寺の「建長汁」が転じたという説がある。建長寺では700年以上前から食べられてきたとされ、修行した僧が各地に広めたと伝わる。豆腐を入れるのは、初代住職が修行僧の落とした豆腐を拾って洗い、汁に入れた逸話に由来するという。精進料理なので動物性の材料は使わず、だしは昆布や椎茸でとる。毎年2月の建長寺の節分会でも振る舞われる。
材料赤大根・人参・ごぼう・しいたけ・長ねぎ・豆腐・油
- 赤大根の皮をむいて切り、ごぼうは薄切りにして水にさらす。人参も切る
- フライパンに油をひき、ごぼう・人参・大根を炒める
- しいたけとねぎを加えて煮て、豆腐を手でくずして入れ、椀によそう
出典: maff.go.jp

干物を焼いた鎌倉朝定食
鎌倉野菜のけんちん汁に、市場の干物屋で買った干物を焼いて添えた朝ごはん。海辺の街の朝食には、魚の干物も外せない。
材料ご飯・魚の干物(あじの開き)・けんちん汁・付け合わせの野菜
- 市場で買った干物を網にのせて焼く
- 炊いたご飯とけんちん汁と一緒に膳に並べる
03土地のこと

江ノ電 鎌倉高校前駅と海沿いの踏切
神奈川県鎌倉市腰越1-1
江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅は、海のすぐそばにある駅。駅から鎌倉方面へ海沿いを少し歩いた踏切は、アニメ『SLAM DUNK』のオープニングに出てくる場面のモデルとされ、海外からも多くの人が訪れる。線路の向こうに七里ヶ浜と江の島、三浦半島が見渡せる。踏切は生活道路なので、線路内に入ったり長く立ち止まったりしないよう呼びかけられている。
出典: gltjp.com

鎌倉野菜
鎌倉近郊の農家が育てる野菜の総称。化学肥料や農薬をできるだけ控え、西洋野菜も含めて少量多品種で栽培するのが特徴で、黒キャベツやアヤメカブ、コールラビ、バターナッツ、紫いもなども並ぶ。レンバイでは、生産者から食べ方を直接聞ける。
出典: mapple.net

江島神社の青銅の鳥居と瑞心門
神奈川県藤沢市江の島2-3-8
江島神社は辺津宮・中津宮・奥津宮の三社からなり、日本三大弁財天のひとつに数えられる。江の島弁天橋を渡って最初に出迎える青銅の鳥居は、江の島詣が盛んだった延享4年(1747年)に建てられ、現在のものは文政4年(1821年)の再建。参道の石段を上った先の朱の鳥居の奥には、竜宮城を模した楼門「瑞心門」が立つ。
出典: tabi-mag.jp gltjp.com

江ノ島丼
さざえを卵でとじて、ご飯にのせた江の島の名物丼。島の食事処の多くが出している。久住昌之・谷口ジローの漫画『孤独のグルメ』の原作第9話「神奈川県藤沢市江ノ島の江ノ島丼」では、主人公の井之頭五郎が江ノ島丼とさざえの壺焼きを食べている。

緑に囲まれた古い木の家
今回お借りしたのは、海辺の坂道を上った先にある古い木の家。庭に白いテーブルと椅子が置かれ、格子戸の戸棚や縁側、すだれ越しの光が差す畳の間がある。
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