
この旅のこと
リアス式海岸の湾を見渡す丘の古民家で、伊根町で買ってきた鯖のへしこの茶漬けを朝ごはんに。日本三名瀑の那智の滝を仰ぎ、生まぐろの水揚げ日本一の勝浦漁港でまぐろ丼。無人販売所でまぐろのカマとみかんを買って帰り、夜はテラスの七輪でカマを焼いた。海と滝と、まぐろの一日。
土地と食のことを、もう少し01TRAVEL JOURNAL
湾を見渡す丘の家で
海を囲むように家々が斜面に並ぶ漁村で、朝を迎えた。借りたのは、湾を見渡せる小高い丘の上に立つ古民家。窓を開けると、瓦屋根の向こうに静かな海と、対岸の集落が見える。
今朝の主役は、前に訪れた京都の伊根町で買ってきた鯖のへしこ。塩漬けにした鯖を糠に漬け込んだ、日本海側の保存食だ。紙の包みをほどいてまな板にのせ、包丁で薄く切っていく。
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へしこの茶漬け
炊きたてのご飯にへしこを並べ、ガラスの急須から熱いお茶を注ぐ。日本海の名産を、紀伊半島の海辺で食べる朝ごはんだ。
窓辺の盆に碗をのせ、海を眺めながら箸を取る。塩気と熟成した旨みがお茶に溶け出して、ご飯が進む。
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リアス式の湾の奥で
この辺りは、リアス式地形の湾の奥に位置する漁村。障子を開け放った窓いっぱいに、山に囲まれた湾が広がる。水面には養殖のいかだが浮かび、流しの窓からも海が見えた。
テラスには七輪と椅子。軒先には、ブリキのちりとりが吊るされている。家を出て、家々の間の狭い階段を下りていく。海を囲んだ斜面に家々が並ぶ、みごとな場所だ。
瓦屋根が折り重なる坂道を下り、板壁の路地を抜けると、その先に光る海。物語の始まりみたいで、わくわくしてくる。熊野・那智勝浦ぶらり旅の始まり。
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日本三名瀑、那智の滝
まず向かったのは、日本三名瀑のひとつ、那智の滝。朱塗りの三重塔の向こうに、白い水の帯が一直線に落ちている。
「世界遺産 那智御瀧」の石碑を過ぎ、杉木立の参道を下る。注連縄を張った岩場の上から、落差133メートルの滝が落ちてくる。飛瀧神社のご神体として崇められてきた滝で、その歴史は紀元前まで遡ると伝わる。滝の飛沫に触れると、延命長寿の霊験があるという伝説もある。
授与所の火鉢では薪が燃え、絵馬には三本足の八咫烏。初代の天皇を導いたと伝わる神の使いだ。杉並木の石段を上り、苔むした大木の根元を眺める。日本の歴史に触れることができる場所だった。
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勝浦漁港、生まぐろの市場
そして那智勝浦の味覚といえば、まぐろ。勝浦漁港は、生まぐろの水揚げ量日本一を誇る港だ。港に建つ「勝浦漁港にぎわい市場」に入ると、氷の上に生まぐろが横たわり、その場で柵に切り分けられて、パックに詰められていく。
店の黒板には「毎朝、店主がせりおとす」「鮪問屋のまかない丼」の文字。だからこの町には、まぐろ丼を出す店がたくさんある。
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港を眺める特等席で、まぐろ丼
港に面した席は、海を眺められる特等席。ドイツのノンアルコールビールをグラスに注いで、まず一杯。景色が旨さを引き立てる。
運ばれてきたのは、生まぐろを使った那智勝浦のまぐろ丼。刻み海苔と青ねぎの下に、赤身がたっぷり。冷凍されていないので、もっちりとした歯ごたえがある。卵黄をのせて食べるのがおすすめ。海鮮丼に卵、これは試験に出る。旨さに拍車がかかった。
食後は港をぶらぶら。崖の上や対岸にはホテルが立ち、岸壁には漁船が並ぶ。市場のそばには足湯があり、木のベンチに座ってしばらく港を眺めた。
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生まぐろの無人販売所
「ようこそ勝浦へ」のゲートをくぐり、「いざかた通り」のアーケードを抜ける。勝浦漁港の周辺には「生まぐろの無人販売所」が複数あるそうだ。気になりますよね。
立ち寄ったのは、「生まぐろセルフ直売所」の看板を掲げた店。壁の板には「今日のおすすめ もちもち天然 生キハダまぐろ」とある。青い台の上に、値段を手書きした生まぐろのパックが並んでいる。まぐろのカマも買っちゃおう。料金はポストに入れる。まいどあり。
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みかんも無人販売
帰り道、道沿いの農産物直売所にも寄った。ここもみかんの無人販売。屋根付きの棚に袋詰めのみかんが並び、黒板には「極早生みかん」の文字。青みの残る秋のみかんを、一袋手に取った。
この場面から映像で見る3:5109TRAVEL JOURNAL
ただいま
商店の前の赤いポスト、石積みの岸壁に並ぶ漁船。海辺の駐車場に車を停めて、丘の家へ戻る。ただいま。
窓辺にみかんの袋を置き、テラスの椅子から湾と集落を見下ろす。日が傾いて、山の影が海に伸びていった。
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炭火のカマと、二度目の生まぐろ
まぐろのカマは、炭火でじっくりと焼こう。七輪に炭をおこし、網の上に大ぶりのカマをのせる。テラスの小さな机には、無人販売所で買った生まぐろの刺身と、ビール。楽しい一日の締めくくりを、美味しい魚たちが彩る。
カマが焼けるまで、晩酌を楽しもう。本日二度目の生まぐろ。赤身と、脂ののった白っぽい身。もちもちとした食感に、もうすっかり虜だ。
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暮れゆく湾
網の上でカマの皮が縮み、脂が炭に落ちて香ばしく焼けていく。流しの向こうの湾は藍色に沈み、対岸の家々に灯りがともった。
焼きたてのカマをほおばりながら、暗くなった湾を眺める。なんて平和な時間なんだろう。
この場面から映像で見る5:20THE BORROWER’S NOTES
借り暮らしの和歌山・那智勝浦メモ。
立ち寄った店、台所で作ったもの、この土地のこと。旅のつづきに、覚えておきたいことを。
01立ち寄った店

市場ごはん しげ
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町築地7-12 勝浦漁港にぎわい市場内
勝浦漁港にぎわい市場の飲食ブースにある丼の店。食券機で注文する方式で、店主が毎朝せりで落とした魚を出す。食べたのは「鮪問屋のまかない丼」。刻み海苔と青ねぎをのせた生まぐろの丼に、卵黄を落として食べた。港を眺める席がある。
出典: tabelog.com retty.me

木下水産物 生まぐろセルフ直売所
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町築地8-6-5
生まぐろの卸の会社が営む、セルフ式の直売所。青い台に生まぐろの刺身のパックが並び、壁の板にその日のおすすめが書いてある。代金は店先の料金ポストに入れる。買ったのは、まぐろのカマと刺身のパック。
出典: yukoyuko.net

フルーツマーケット市木
道沿いにある無人の農産物直売所。屋根付きの棚に袋詰めのみかんが並び、黒板に品種と値段が書いてある。みかんの産地として知られる三重県御浜町や熊野市の農家が、それぞれのみかんを出している。買ったのは、秋に出回る極早生みかん。
出典: pref.mie.lg.jp
02作った料理

へしこの茶漬け
へしこは、内臓を取った鯖を塩漬けにし、さらに糠に漬けて長く保存する福井県・若狭地方の伝統食。冬を越すための貴重なたんぱく源で、江戸時代の中ごろにはすでに作られていたという。糠を落として切り、軽くあぶるほか、お茶漬けや酒の肴、おにぎりの具にもなる。今回は京都の伊根町で買ったへしこを、紀伊半島の漁村で茶漬けにした。
材料ご飯・鯖のへしこ・熱いお茶
- へしこを包みから出し、薄く切る
- ご飯の上に並べる
- 急須から熱いお茶を注ぐ
出典: maff.go.jp

まぐろのカマの炭火焼き
那智勝浦町は、生鮮まぐろの水揚量日本一を誇る漁業の町。勝浦漁港には延縄漁法にこだわる人々がいて、入港する船を延縄漁船に限定したのは昭和50年代のことだという。一本ずつ釣り上げて冷凍せずに運ぶ生まぐろのカマを、港の近くの無人販売所で買い、丘の家のテラスで炭火焼きにした。
材料生まぐろのカマ・炭
- 七輪に炭をおこす
- 網の上にカマをのせ、じっくり焼く
- 皮が縮んで焼き色がついたら食べごろ

生まぐろの刺身
勝浦の生まぐろは、冷凍されていないので、もっちりとした食感がある。昼にまぐろ丼で食べたのに続いて、本日二度目の生まぐろ。炭火でカマが焼けるまでの晩酌の肴にした。
材料生まぐろ(赤身と脂の多い身)・大葉・大根のつま・醤油
- パックの刺身を大根のつまと大葉を添えて皿に盛る
- 醤油で食べる
03土地のこと

那智の滝(飛瀧神社)
日本三名瀑のひとつ。落ち口の幅13メートル、滝壺の深さ10メートル、落差133メートルを一気に落ちる。熊野那智大社の別宮・飛瀧神社のご神体で、神武天皇がこの滝を神として祀ったことに始まると伝わる。拝所の手前には「延命長寿の水」が湧き、神盃で受けて飲むことができる。1972年に国の名勝「那智大滝」に指定され、2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録された。

熊野那智大社と八咫烏
那智の滝への信仰から生まれた熊野三山のひとつで、その歴史は約1700年前まで遡る。初代の神武天皇を奈良へ導いた三本足の大きなカラス、八咫烏がこの地に降り立ったと伝わり、絵馬にもその姿が描かれている。毎年7月の那智の火祭では、祭神が神輿で那智の滝へ「里帰り」する。
出典: mlit.go.jp

勝浦の生まぐろ
沖合を黒潮が流れ、複雑な海岸線が続く那智勝浦町は、生鮮まぐろの水揚量日本一を誇る漁業の町。勝浦漁港には延縄漁法にこだわる人々がいて、入港する船を延縄漁船に限定したのは昭和50年代のこと。一本ずつ釣り上げ、冷凍せずに運ぶので、港では「生まぐろ」として売られる。町にはまぐろ丼を出す店が多く、港の周りには生まぐろの無人販売所もある。

勝浦漁港にぎわい市場と足湯「海之湯」
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町築地7-12
勝浦漁港に隣接する市場。生まぐろや地魚の干物、野菜などを売る直売コーナーと、まぐろ料理や寿司、定食の店が並ぶ飲食ブースがあり、毎日まぐろの解体ショーが開かれる。すぐそばに、海を眺めながら浸かれる無料の足湯「海之湯」がある。

鯖のへしこ
鯖を塩漬けにし、糠に半年ほど漬け込んだ福井県・若狭地方の保存食。塩味と旨みが強く、燻製に近い風味がある。若狭の魚介は都へ運ばれ、主に塩漬けの鯖を運んだ道が後に「鯖街道」と呼ばれた。今回のへしこは、前に訪れた京都の伊根町で買ったもの。
出典: maff.go.jp

湾を見渡す丘の古民家
今回お借りしたのは、リアス式海岸の湾の奥にある漁村の、小高い丘の上に立つ古民家。障子を開けると窓いっぱいに湾が広がり、七輪を置いたテラスからは集落の瓦屋根と海を見下ろせる。
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