
和歌山ラーメンは地元では「中華そば」と呼ばれ、昭和初期の屋台に始まるとされる。豚骨醤油のスープが基本で、すっきりした「車庫前系」と、まろやかで濃厚な「井出系」がある。店の卓上には早すし(酢でしめたサバの押しずし)やゆで卵が置かれ、好きなときに取って食べる。有田川町の清水地域には、魚をのせた酢飯をアセの葉で包む伝統の「はやずし」があり、葉で包むと持ち運びやすく、傷みにくい。
この旅の、この場面
卓上の早ずしと、和歌山ラーメン
山を下りて、中華そばの店に入った。厨房の脇には製麺所の箱が積まれ、テーブルの籠には、葉で包んだ「早ずし」が置いてある。
早ずしは自由に取って、好きなタイミングで食べる(お代は、あとでまとめて払う)。それが、ここ和歌山のラーメン店のスタイルだ。「和歌山のラーメン店の卓上には、寿司が置いてある」。そう聞いてから、押し寿司好きの私はずっと心がときめいていた。
葉をほどくと、酢でしめたサバの押しずしが現れる。品書きの並ぶ壁に、窓辺の赤い丸椅子。運ばれてきたのは、醤油豚骨のスープにかまぼこがのった和歌山ラーメン。すっきりしていて濃厚なスープに、まっすぐな中細麺がよく合う。
コクの深いラーメンを、さっぱりした早ずしが引き立てる。この名脇役が卓上にいる理由に、ひと口で納得した。
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