
この旅のこと
沖縄本島の北部、本部町。赤瓦にシーサーの載る古民家で目を覚まし、海ぶどうの朝ごはんから一日が始まった。フクギ並木を抜けてエメラルドグリーンの海へ寄り道し、日本で一番早い桜まつりが開かれる八重岳で、琉球寒緋桜の下を歩く。ジンベエザメの泳ぐ美ら海水族館を初めて訪ね、カツオの町の市場で真っ赤な刺身を買って帰った、1月の沖縄の一日。
土地と食のことを、もう少し01TRAVEL JOURNAL
さくら咲く島へ
薄明かりの海辺の道に腰を下ろして、一日の始まりを待つ。遠くの岬には、ホテルの灯りがまだ残っていた。
石垣の門の向こうに海が光り、フクギの並木がトンネルのように続いている。桜の咲く美ら島、沖縄。ここでは、もう春だ。
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本部町の朝、海ぶどうの朝ごはん
沖縄本島の北部にある本部町の朝。赤瓦の屋根の上では、シーサーが朝焼けの空を見ている。芝の庭の奥に、白い板壁の古民家が建っていた。映画「糸」のロケ地にもなった家だという。
ガラスの器にご飯を盛って、海ぶどうをたっぷりとのせる。台所の窓からは、庭の緑が見える。真ん中に卵黄を落とせば、朝ごはんのできあがり。
美ら海水族館が有名なこの町では、日本で一番早い桜まつりが開かれる。のれん越しの食卓に、朝の光が差し込む。箸で卵黄を崩して、ぷちぷちの海ぶどうにからめた。
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フクギ並木とエメラルドグリーンに誘われて
縁側に腰かけて、ブーツを履く。本州では冬真っ只中の、1月下旬。そんな時期の桜まつりが、ずっと気になっていた。
家を出ると、フクギ並木の先に海が光っている。並木の途中では、猫が日向ぼっこをしていた。木々のトンネルを抜けると、エメラルドグリーンの浅瀬と白い砂浜が広がる。
近くのビーチに寄り道。青く塗られた売店にはかき氷やコーヒーの品書きが掛かり、壁にはジンベエザメの絵。桟橋に出て、冷たい飲み物を手に海を眺めた。沖には、城山をいただく伊江島が浮かんでいる。フクギの道を戻って、桜まつりへ向かう。
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日本一早い桜まつり
八重岳に着くと、濃いピンクの花が枝いっぱいに咲いていた。琉球寒緋桜だ。会場の入口には「第45回 本部八重岳桜まつり」の顔出し看板が立ち、「本日 8分咲き」と貼り紙がしてある。道の上には提灯が渡され、桜の幟が風にはためいていた。
桜並木の下を歩く。出店にはかき氷の旗と綿あめ、やぎ汁の屋台に、たい焼きの屋台。桜まつりというより、縁日の空気だ。
道端のピンクの看板には「八重桜 花びら舞えば チムドンドン」。チムドンドンは、沖縄の言葉で胸が高鳴ること。山道の先に、桜越しの海が見えた。春でぇむん。春だもの。
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1月のテラス席で、沖縄そば
山道の脇に「沖縄そば 森の家」の看板。矢印に導かれて、木々に隠れた店に入った。
テラス席に運ばれてきた沖縄そばには、豚肉とゆで卵、たっぷりの青ねぎ。太めの麺を持ち上げると、湯気が立つ。1月にテラス席で「そば」をいただく。春でぇむん。
お供はオリオンのノンアルコールビール。小鉢の野菜と一緒に、木漏れ日の下でゆっくり食べた。店の中には水槽と花の絵が飾られ、籐の椅子が並んでいる。シーサーの置物が入口を守る、森の中の店だった。
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黒潮の海
あの巨大な水槽で知られる美ら海水族館へ。初めての訪問だ。青い水の中を、ジンベエザメがゆっくりと横切っていく。
エイが翼のようにひれを広げ、回遊魚の群れが光る。砂の中からは、チンアナゴが顔をのぞかせていた。
目の前を通り過ぎるジンベエザメの迫力に、胸が高鳴る。大水槽の前に立って、思い思いに泳ぐ魚たちをいつまでも眺めていた。
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カツオの町の市場で
夕方、町の中心にある市場へ。アーケードの窓から、通りの向かいの鮮魚店が見える。入口には「もとぶ町営市場」の看板。シャッターの下りた店が多い商店街を、たしかこの辺りにあるはずと歩く。
あった。「新鮮 カツオベンチ」。沖縄本島で唯一、カツオ漁が行われている本部町。鮮度抜群のカツオが水揚げされる町のシンボルは、カツオの形をしたベンチだった。
市場の向かいの鮮魚店をのぞく。ショーケースには、まぐろとかつおの柵が値札と並んでいる。今夜の刺身を包んでもらった。ありがとうございます。
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ただいま、美ら海に沈む夕日
袋を提げて古民家に戻る。ただいま。縁側のガラス戸を開けると、台所の明かりが待っていた。畳の間の向こうに、庭の緑が切り取られている。
日が傾いたので、海へ。水平線に、夕日がゆっくりと沈んでいく。木々の間から見送る夕日は、海の上を橙色に染めた。暮れきった空の下、伊江島のシルエットだけが残る。古民家に明かりが灯った。
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沖縄そばの焼きそばと、カツオの刺身
夕食の支度。もちもちで歯ごたえのある沖縄そばは、焼きそばにしても絶対おいしいはず。鍋にキャベツともやし、にんじん、薄切りの肉を入れて、ガスの火で炒める。麺を加えて、「沖縄そばのツユ」で味付けした。
食卓にはオリオンのノンアルコールビールの缶と、皿に盛った焼きそば。そして、真っ赤でキラキラなカツオの刺身。大根のつまときゅうりを添えて、醤油とわさびで。新鮮でもちもちで、最高にうまい。
ガラスの器には、汁ごといただく「ゆしどうふ」。焼きそばの上には削り節をかけた。カツオの風味が太麺に絡んで、いっぺーまーさん。とてもおいしい。
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最高に楽しい、沖縄遠足の一日
夜の縁側に、ひとつだけ明かりが灯る。食器棚の並ぶ板の間で、ゆっくりと夕食を続けた。
美しい景色に、おいしい料理に、かわいい魚に。でーじチムドゥンドゥンしたさぁ。とても胸が高鳴った、最高に楽しい沖縄遠足の一日だった。
この場面から映像で見る4:36THE BORROWER’S NOTES
借り暮らしの沖縄・本部メモ。
立ち寄った店、台所で作ったもの、この土地のこと。旅のつづきに、覚えておきたいことを。
01立ち寄った店

ビーチの売店
フクギ並木を抜けた先のビーチにある、青く塗られた売店。壁にはかき氷やコーヒーの品書きと、ジンベエザメの絵。桟橋で飲んだ冷たい飲み物は、ここで買ったようだ。

沖縄そば 森の家
沖縄県国頭郡本部町伊豆味743-3
八重岳の山道の脇、木々に隠れた沖縄そばの店。広い敷地にテラス席があり、かつお出汁のあっさりしたスープで知られる。今回は豚肉とゆで卵、青ねぎをのせた沖縄そばを、テラス席で。入口にはシーサーの置物、店内には水槽と花の絵がある。
出典: hamoni.jp

もとぶ町営市場
沖縄県国頭郡本部町渡久地4
本部町の中心、渡久地にある昔ながらの公設市場。アーケードの下にはシャッターを下ろした店も多いが、カフェや雑貨の店などが営業している。アーケードの一角に、「新鮮 カツオベンチ」の看板とカツオの形をしたベンチが置かれている。
出典: 4travel.jp

市場の向かいの鮮魚店
町営市場の向かいにある鮮魚店。ショーケースには、まぐろとかつおの柵が値札とともに並んでいた。ここで買ったカツオを、夜に刺身で食べた。
02作った料理

海ぶどうと卵黄のご飯
海ぶどう(クビレズタ)は、沖縄県の養殖生産量・生産額ともに第3位を占め、県を代表する特産品として知られる海藻。ぷちぷちとした食感が持ち味で、県北部では家族経営の養殖場が多い。今回は沖縄の朝ごはんとして、ご飯にたっぷりのせて卵黄をからめた。
材料ご飯・海ぶどう・卵黄
- ガラスの器にご飯を盛る
- 海ぶどうをたっぷりのせる
- 真ん中に卵黄を落とし、箸で崩して混ぜる
出典: pref.okinawa.jp

本部のカツオの刺身
本部町の鮮魚店で買った、水揚げされたばかりのカツオ。本部町はカツオ一本釣り漁業が沖縄本島で唯一残る町で、鮮度のよいカツオは刺身で食べられる。真っ赤でもちもちの身を、大根のつまときゅうりに添えて、醤油とわさびで。
材料カツオの柵(市場の向かいの鮮魚店で)・大根・きゅうり・わさび・醤油
- カツオを厚めに切る
- 大根のつまときゅうりを敷いて盛る
- わさびと醤油でいただく

沖縄そばの焼きそば
沖縄そばは、そば粉ではなく小麦粉でつくる麺の料理。400〜500年前に中国から伝わり、琉球王国の宮廷料理から戦後に庶民へ広まったとされる。豚だしは豚の肉や骨からとり、かつおだしと合わせて使われることが多く、沖縄そばのスープはそのバランスが家庭や店ごとの味の決め手になる。もちもちで歯ごたえのある太麺を、今回は焼きそばに。沖縄そばのツユで味付けし、仕上げに削り節をかけた。
材料沖縄そばの麺・キャベツ・もやし・にんじん・薄切りの肉・青ねぎ・沖縄そばのツユ・削り節
- 鍋で野菜と肉を炒める
- 麺を加えて炒め合わせる
- 沖縄そばのツユで味付けする
- 皿に盛り、削り節をかける
出典: maff.go.jp maff.go.jp
03土地のこと

備瀬のフクギ並木
沖縄県国頭郡本部町備瀬
本部半島の北西の端、備瀬の集落には、防風林として家を囲むように植えられたフクギが連なり、沖縄本島で最大規模の並木道をつくっている。集落のほとんどの道にフクギの並木が続き、備瀬崎までおよそ1キロ。並木の先には海が開け、沖に伊江島が見える。海洋博公園のすぐ近くにありながら、集落全体が静かな雰囲気に包まれている。

伊江島と城山
本部半島の西およそ5キロの海に浮かぶ島で、伊江村をなす。島の東部にそびえる尖った峰が城山(グスクやま)で、「伊江島タッチュー」と呼ばれる島のシンボル。島の最高地点は172.2メートル。備瀬の桟橋からも、夕暮れの海の向こうにも、その姿が見えた。
出典: ja.wikipedia.org

琉球寒緋桜(カンヒザクラ)
沖縄で桜といえば、濃いピンクの花を釣鐘のように下向きに咲かせる寒緋桜。沖縄気象台の開花の発表は例年1月18日前後で、標本木は那覇市の末吉公園にある。本土の桜前線とは逆に、沖縄では本島北部から南へと咲き進む。1月下旬の八重岳は、そのいちばん早い見頃にあたる。
出典: tabi-mag.jp

八重岳桜の森公園と、もとぶ八重岳桜まつり
沖縄県国頭郡本部町並里921
八重岳は本部町と名護市の境にある標高453.4メートルの山で、沖縄本島では2番目に高い。中腹から頂上へ続く約4キロの道沿いに、約7,000本の寒緋桜が並ぶ。「ひとあし、お咲きに」が合言葉の「もとぶ八重岳桜まつり」は、日本で最も早い桜まつりとされ、1979年1月に第1回が開かれた。2023年の第45回は1月21日から2月5日まで、八重岳桜の森公園を主会場に開かれ、開幕時は全体で四分咲きだった。
出典: motobu-ka.com rurubu.jp ryukyushimpo.jp ja.wikipedia.org

沖縄美ら海水族館
沖縄県国頭郡本部町石川424(海洋博公園内)
海洋博公園の中にある水族館で、現在の建物は2002年11月に開館した。大水槽「黒潮の海」は水量7,500立方メートル、長さ35メートル・幅27メートル・深さ10メートル。観客との間を隔てるアクリルパネルは高さ8.2メートル・幅22.5メートル・厚さ60センチ。全長8.8メートルのジンベエザメを1995年3月から飼育し、ナンヨウマンタの複数飼育と繁殖に世界で初めて成功した。

カツオの町、本部
「カツオと言えば、本部。本部と言えば、カツオ」と言われる町。明治期に始まったカツオ一本釣り漁業と、1905年に地元の有志の組合が始めた鰹節製造で知られ、カツオ漁業は沖縄本島で唯一、鰹節の製造工場も本島で唯一とされる。カツオは町の魚にもなっている。かつて鰹節の産地として栄えた渡久地港は、今も漁業の拠点で、水揚げされたカツオの多くは鮮魚と鰹節に使われる。町営市場のアーケードには、カツオの形をしたベンチが置かれている。

オリオン クリアフリー
沖縄のオリオンビールがつくる、アルコール分0.00%のノンアルコールのビールテイスト飲料。糖質・カロリー・プリン体がゼロで、県産の大麦を使う。そばの店では瓶で、夕食では缶で飲んだ。
出典: orionbeer.co.jp

ゆし豆腐
沖縄の豆腐は温かい状態で売られているのが特徴で、崩れにくいため炒め物に重宝される。にがりを入れて固まり始めた、型に入れる前の状態が「ゆし豆腐」で、汁ごと器に盛って食べる。かつお節や豚のだしを多く使う沖縄の庶民料理では、豆腐は日常の食材だ。
出典: maff.go.jp

赤瓦とシーサーの古民家
今回お借りしたのは、フクギに囲まれた集落にある、沖縄の伝統的な造りの古民家。赤瓦の屋根にシーサーがのり、白い板壁の縁側にガラス戸がついている。映画「糸」のロケ地になった家だという。台所と、食器棚の並ぶ板の間の食卓、畳の間があり、庭は芝生。
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