
この旅のこと
台北から特急で東へおよそ2時間、山と海に囲まれた街、花蓮。民泊の台所で紫のもちとうもろこしを蒸し、黄色い軽トラの炸蛋蔥油餅、扁食、ふかふかの小籠包と、名物を食べ歩いた。琉球松に囲まれた松園別館、夜市の馬告ソーセージと竹筒飯、老舗の紅茶店、花蓮ブルーの海を見下ろすレストラン、壽豐のサトウキビ氷と臭豆腐。雨の夜は、台湾の即席ジャージャー麺で締めくくった。
土地と食のことを、もう少し01TRAVEL JOURNAL
山のある街、花蓮
台北駅から特急に乗って、東へおよそ2時間。山と海に囲まれた街、花蓮に着いた。通りの看板の向こうには、雲をまとった山並みがそびえている。暮らしの中に、荘厳な山の風景がある街だ。
雄大な自然を有する観光地としても知られる。果物店の店先には文旦やドリアン、龍眼が積まれ、雨に濡れた通りでは、壁画の前をスクーターが走り抜けていく。大木の木陰には、野菜や瓶詰めを並べた露店が開いていた。穏やかな空気と、素朴な雰囲気の漂う素敵な街だ。
今回お借りしたのは、蔦に覆われた二階建ての家。ここを拠点に、花蓮の日常を味わってみよう。
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紫のもちとうもろこしの朝
宿の台所で、朝ごはんの支度をする。まずはドラゴンフルーツに包丁を入れる。今日の主役は、日本では珍しい「紫糯玉米」。紫と白の粒が混ざったもちとうもろこしを蒸して、台湾の芋と一緒に皿に盛り、今朝は烏龍茶にしよう。
ひと口かじると、驚きのもちもち食感で、日本のとうもろこしとはまったく違う。甘さは控えめで、すっかり気に入った。そして、素朴な甘さがくせになる台湾の芋。新鮮な南国フルーツがすぐ手に入るのも嬉しい。
窓ガラスには、2023年の「旺」の赤い飾り。裏手の路地をのぞくと、庭先でキジトラの猫がこちらを見ていた。ごきげんな台湾の朝。
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黄色い軽トラの炸蛋蔥油餅
街へ出ると、黄色い軽トラの屋台に行列ができていて、気になった。大鍋の油の中で、生地がみるみるふくらんでいく。油で揚げた、卵入りの葱餅だそうだ。
揚げたてに刷毛でタレを塗り、紙に包んでもらう。サクサクもちもちの生地をかじると、トロトロの半熟たまごが流れ出す。ニンニクの効いた甘辛いタレがよく合う。これはたまらない。
見上げれば、「炸彈蔥油餅」の看板が青空に突き出していた。花蓮に来たら絶対に食べるべき、と聞いて訪れた店。本当に絶品だった。
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琉球松に囲まれた松園別館
小高い丘の上に、琉球松にぐるりと囲まれた「松園別館」がある。蔦に覆われた柱の間の廊下を抜けると、アーチの回廊をもつ二階建ての建物が現れた。
日本統治時代、ここは日本軍の軍事施設だった。1942年に建てられ、花蓮港の兵事部が置かれていたという。2階からの眺めは、視界に広がる花蓮港。川にかかる赤い橋の向こうに、防波堤と灯台、そして海が見える。
樹齢100年を超える松も、歴史がある建物も、平和の尊さを今の時代に語り継いでいる。松の木陰の小道を歩き、門の石碑を眺め、入道雲の下の花蓮の街を見下ろした。松や建物、防空壕が丁寧に保存されていて、今はカフェも併設された花蓮の観光地になっている。
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花蓮名物、扁食
花蓮の名物といえば「扁食(ビエンシー)」だそうで、通りにはたくさんの扁食屋さんを見かける。老舗の人気店も気になったけれど、ふらりと通りがかった「花蓮香」の看板の店に入った。調理場では、店の人が湯気の立つ鍋で扁食を茹でている。
日本では「ワンタン」でおなじみのこちら。運ばれてきた丼には、ぷっくりとした扁食がスープに浮かんでいた。薄い皮の中には、ギッチリとつまったジューシーな餡。セロリ風味の、優しいあっさりスープが染み渡る。
調理台の脇の保温鍋には、煮込んだ豆腐などの小菜が並んでいた。暖かくて美味しくて、心底癒やされた。
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ふかふかの小籠包
花蓮の美味しいもの、続いては小籠包。日が暮れて、ネオンの灯る公正街へ。店先には蒸籠が高く積まれ、湯気がもうもうと立ちのぼっている。この風景だけで、テンションが上がる。
ここ「周家」の小籠包は、肉まんのようなフカフカ生地。かじると、旨味を濃縮した肉汁がほとばしる。ふかふかの生地に肉汁が染み込んで、もう一口ひとくちが美味しい。私、これ何個でも食べられます。
滋味深い味の酸辣湯で、興奮を抑える。隣には「公正包子店」の看板が出ていた。公正包子店は、その後、仁愛街へ移転している。
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夜市の原住民料理
台湾の楽しみといえば、なんといっても夜市。花蓮には、400以上の店が軒を連ねる大型の夜市、東大門夜市がある。「原住民一條街」のゲートをくぐると、台湾原住民料理の屋台が並んでいた。
屋台の炭火で焼かれていたのは、幻の香辛料「馬告(マーガオ)」を使ったソーセージ。台湾原住民の住む山奥に自生するという馬告は、レモングラスのような爽やかな香りがする。もうひとつは、竹筒の中にお米を入れて炊く「竹筒飯」。竹を割ると、もちもちのおこわが現れた。
おこわに移った竹の香りと、爽やかな馬告の香りが、暑い夜を盛り上げる。日常にお祭り気分がある、台湾の夜。
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老舗の紅茶店で、朝のお茶を
朝、宿の門の前に出ると、白い看板が木陰に立っていた。洗い場には洗剤のボトルとたわし。細い路地では、洗濯物が風に揺れている。部屋の壁の棚には、花蓮の道を写した絵はがきが並んでいた。
今朝は、趣のある老舗の店でお茶にしよう。向かったのは、赤レンガの建物の角にある、花蓮の四大紅茶のひとつに数えられる「黎明紅茶」。店先では白い猫がヘルメットの横でくつろいでいる。路地に面して開け放たれた、素朴で家庭的なお店だ。
鉄板の上では、卵料理ときつね色の丸い焼き物が焼かれていく。ガラスのケースに並ぶ台湾式のマカロンは細長い形で、ダックワーズのようにふわふわしていた。杏仁ミルクの入った甘い紅茶を飲みながら、まわりに漂う穏やかな空気に身をまかせる。レトロで暖かい雰囲気に、こころが和む。
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タロコより、今日は海を
通りの標識には、太魯閣、花蓮駅、東大門夜市の文字。花蓮の名所、タロコ渓谷も気になるけれど、今日は海を眺めながら、のんびり過ごそうかな。
花蓮は、海の景色も素晴らしい。松の並ぶ岬の向こうに、海沿いの街と、雲をまとった山並みが続いている。橙色の瓦屋根の小さな廟、波打ち際の崖に張り出した木の小屋。山が海に迫る道を、海を横目に歩いた。
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花蓮の海を一望するレストラン
お昼は、花蓮の海を一望できるレストランで。崖の上に建つ「望海巴耐」は、窓を開け放った食堂の向こうに、どこまでも海が広がっている。入口のガラス戸には、土雞(地鶏)や石板烤肉、竹筒飯、山豬肉といった、原住民料理の品書きが並んでいた。
海辺のレストランなので、おすすめの「海鮮焼きそば」をオーダー。厨房では店の人が大きな鍋を手に料理をしていて、運ばれてきた皿には大きなエビやアサリがたっぷりのっていた。濃厚な魚介出汁の旨味をまとった麺が、本当に美味しい。ずっと食べ続けていたい味だ。
食後はテラスへ。柵にもたれて、花蓮ブルーの海を眺める。台湾でよく見かける檸檬ジュースは、パッションフルーツの種が入った「百香檸檬」だった。花蓮ブルーと、爽やかな檸檬ジュースに癒やされる、のんびり贅沢なひととき。
この場面から映像で見る7:14
















11TRAVEL JOURNAL
壽豐の、昔ながらのサトウキビ氷
花蓮にいるなら、訪れてみたかったかき氷の店がある。壽豐駅のそばにある「豐春冰菓店」。1949年から続く、地元の氷菓子の店だ。
サトウキビ氷に、トッピングを2種類選ぶ。ねっとりしたタロイモのアイスと、上質なあんこ。そして昔ながらのサトウキビ氷の、素朴な甘み。70年以上も働き続けている製氷機が作り出す味だ。
買ってすぐに、店先には「已售完」(売り切れ)の札が出た。幸運だった。
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お土産に、臭豆腐を
帰り道、道端に黄色い看板の出た「黯然銷魂臭豆腐」に寄った。納豆好きとしては、同じ発酵系の大豆料理である臭豆腐が、ずっと気になっていた。手書きの品書きには、臭豆腐に香辣燒烤臭豆腐、柳葉魚、沙拉蝦球、鹽炒花生、泡菜。お土産に一つ買って帰ろう。
宿に戻ると、塀の上でキジトラの猫が「おかえり」と迎えてくれた。ただいま。
カリッと揚がった臭豆腐と、キャベツの泡菜(パオツァイ)。たしかにひるむほどの強烈な匂いだけれど、醤油ベースのニンニクが効いたタレを吸った臭豆腐には、独特の旨味がある。爽やかな泡菜もよく合って、根強い人気にうなずいた。臭豆腐は、ノンアルコールビールによく合う。
この場面から映像で見る8:4513TRAVEL JOURNAL
雨の夜の、即席ジャージャー麺
夜になって、雨が降り出した。雨模様のこんな夜は、インスタント麺とノンアルコールビールが美味しい。レトロ可愛いパッケージに惹かれて買った、台湾でポピュラーな即席ジャージャー麺「維力炸醬麵」。袋には「乾麵附湯・一包兩吃」とある。
ネギを刻み、フライパンで湯を沸かして麺を茹でる。この茹で汁は、付属の粉末スープに使う。麺にタレを絡め、ネギと、コンビニで買ってきた味玉を添えて、台湾即席ジャージャー麺セットの出来上がり。汁なし麺には、ノンアルコールビールが欠かせない。
いただきます。これは、すごく美味しい。豆板醤の入った甘辛い味付けがとても好みで、こんなに美味しい即席麺は食べたことがない。日本人もきっとみんな好きな味だ。
この場面から映像で見る9:4714TRAVEL JOURNAL
台湾花蓮、ありがとう
壁の古い時計が、静かに夜の時を刻んでいる。現地の日常の味を楽しんでみるのは、やっぱり、すごく楽しい。
夜の宿の窓に、灯りがともる。台湾花蓮、ありがとう。
この場面から映像で見る11:47THE BORROWER’S NOTES
借り暮らしの花蓮メモ。
立ち寄った店、台所で作ったもの、この土地のこと。旅のつづきに、覚えておきたいことを。
01立ち寄った店

炸彈蔥油餅(復興街の黄色い車)
台湾 花蓮縣花蓮市復興街102號
黄色い軽トラを店にした、炸蛋蔥油餅の店。卵入りの生地を大鍋の油で揚げ、刷毛で甘辛いタレを塗って、紙に包んで渡してくれる。同じ通りには、親戚が営む青い車の店もある。

花蓮香扁食
1997年に花蓮で始まった、扁食のチェーンの店。薄い皮に餡をぎっしり詰めた扁食を、セロリの香るあっさりしたスープで出す。調理台の脇の保温鍋には、煮込んだ豆腐などの小菜が並んでいた。

周家蒸餃小籠包
台湾 花蓮縣花蓮市公正街4-20號
公正街で、店先に蒸籠を高く積み上げる小籠包と蒸餃の店。小籠包は肉まんのようなふかふかの生地で、肉汁がたっぷり。酸辣湯と一緒に食べた。隣に看板が見えた公正包子店は、その後、仁愛街46號へ移転した。
出典: supertaste.tvbs.com.tw travel.yam.com supertaste.tvbs.com.tw

東大門夜市・原住民一條街の屋台
原住民一條街に並ぶ屋台のひとつ。炭火で焼いた馬告ソーセージと、竹筒で炊いた竹筒飯を買った。値札には、豬太鹹(塩漬けの豚肉)や飛魚卵香腸(トビウオの卵入りソーセージ)の名前もあった。

黎明紅茶
台湾 花蓮縣花蓮市南京街185號
花蓮の四大紅茶のひとつに数えられる、30年以上続くとされる老舗。路地に面したレトロな店で、紅茶と朝ごはん、台湾式マカロンを出す。マカロンは細長い形で、ダックワーズのようにふわふわしていた。

望海巴耐餐廳
台湾 花蓮縣壽豐鄉鹽寮村大橋22號
花蓮の市街から車で20分ほど、台11線沿いの鹽寮で、崖の上に建つ食堂。窓の向こうに太平洋が広がる。原住民風の料理と海鮮を出す。おすすめの海鮮焼きそばと、百香檸檬を頼んだ。
出典: travel.yam.com

豐春冰菓店
台湾 花蓮縣壽豐鄉壽豐路一段79號
壽豐駅の斜め向かいにある、1949年創業の氷菓子の店。製氷の段階でサトウキビの汁を混ぜ込む甘蔗冰が名物で、紅豆などの配料は薪の火で煮込む。台湾でも数少なくなった、古い型の製氷機を使っている。
出典: travel.yam.com

黯然銷魂臭豆腐
台湾 花蓮縣壽豐鄉農墾二街2號
壽豐の道沿いに、黄色い看板を出す臭豆腐の店。カリッと揚げた臭豆腐に、醤油ベースのニンニクが効いたタレと、キャベツの泡菜を添える。香辣燒烤臭豆腐や柳葉魚、鹽炒花生もある。
出典: mirrormedia.mg
02作った料理

紫糯玉米と台湾の芋の朝ごはん
台湾では、甘いとうもろこしの粒と、もちもちした糯(もち)とうもろこしの粒を一本の穂に並べた「甜糯玉米」が育成されている。紫紅と白の粒が交互に並び、皮が薄くて甘い「彩虹系列」と、花青素(アントシアニン)を多く含む「紫黒系列」がある。今回のとうもろこしも、紫と白の粒が混ざっていた。日本のとうもろこしとはまったく違う、もちもちの食感だった。
材料紫糯玉米(もちとうもろこし)・台湾のさつまいも・ドラゴンフルーツ・烏龍茶
- 紫糯玉米を蒸す
- ドラゴンフルーツを半分に切り、食べやすく切り分ける
- とうもろこしとさつまいもを皿に盛り、急須で烏龍茶をいれる
出典: foodnext.net

台湾即席ジャージャー麺セット
維力炸醬麵は、台湾の維力食品工業が1973年に発売した即席の汁なし麺。スープの付いた台湾式の炸醬麵で、スープを作る器と麺を和える器を分けて食べる。発売まもなく台湾で広く親しまれるようになった。
材料維力炸醬麵(即席麺)・ネギ・味玉(コンビニで買ったもの)
- ネギを刻み、味玉を半分に切る
- フライパンで湯を沸かし、麺を茹でる
- 茹で汁は付属の粉末スープに使う
- 麺にタレを絡め、ネギと味玉をのせる
出典: en.wikipedia.org
03土地のこと

松園別館
台湾 花蓮縣花蓮市松園街65號
花蓮港を見下ろす丘の上に、1942年に建てられた日本統治時代の軍の施設。花蓮港の兵事部が置かれ、当時の花蓮で最上位の軍事指揮機関だった。周りには琉球松の林が残る。戦後は国軍の管理を経て、1950年代には米軍顧問団の休暇施設になった。花蓮縣の歴史建築に登録されている。2024年9月に台風で園内の木が倒れて閉園し、整修を経て2025年1月10日に再び開いた。

東大門夜市と原住民一條街
花蓮市の大型の夜市。約9ヘクタールの敷地に、福町夜市、自強夜市、原住民一條街、大陸各省一條街の4つの区画があり、400を超える店が並ぶ。原住民一條街には、台湾原住民の料理を出す屋台が集まっている。

馬告(マーガオ)
馬告は、台湾原生の山胡椒(やまこしょう)を指す泰雅(タイヤル)族の言葉。低い山の広葉樹林に育ち、主な産地は烏來、南投、花蓮。塩が手に入りにくかった昔、泰雅族はその種を調味料にして、香りづけや臭み消しに使ってきた。今も多くは野生のものを採っている。馬告雞湯(スープ)や馬告香腸(ソーセージ)などの料理に使われる。
出典: foodnext.net

花蓮の扁食
花蓮では、扁食(ワンタン)の店を町の至るところで見かける。70年以上続く液香扁食店をはじめ、一品香や花蓮香など、名の知れた店が多い。

蔦に覆われた二階建ての宿
今回お借りしたのは、蔦に覆われた二階建ての家。古い琺瑯の看板が掛かる台所、ソファの並ぶ居間、古い掛け時計のある部屋がある。
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